ダークナイト

監督:クリストファー・ノーラン

 

以前知り合いが

ダークナイトは当たりだった」

と評していたので、気になってたのと、

この映画を撮り終わっても、ジョーカーの役が抜けきれず

命を絶ってしまったヒース・レジャーの演技に興味があったところ、

ようやく見ることができた。

 

結論。

これはちゃんと「よかったよ」と人におすすめできる。

 

(以下ネタバレ注意)

 

 

 

 

 

正義の新任判事が、中盤顔にやけどを負ってしまうのって、

闇落ちするターニングポイントだけど、

ダークサイドに落ちたのを視覚的にも表現してるってワケだよね。

 「幸せのレシピ」の人がやってて(アーロン・エッカート

ちょっとうれしくなってしまった。

 

レイチェルの手紙にまつわるあたりのエピソードは切ないっす。

ウェインは自分と結婚するつもりでいてくれてると思ってたけど、

実は違うとか。。。

 

あとは見せ方と間の取り方が上手だったなーと。

緩急がテンポよく交互に来るから

飽きないし、2回見ても驚いてしまったり。

この監督の作品をもっと見てみたいと思った。

 

イヴ・サンローラン

監督:ピエール・トレントン

2010年、フランス

 

YとSが組み合わさったブランドのマークは

子供のころ母親の化粧品の中に混じっていた気がする。

だから個人的には何やら懐かしい感じのするブランド。

 

公私ともに50年来のパートナーを務めたピエール・ベルジュの視点を軸に、

イヴの生涯を振り返るドキュメンタリー。

ドキュメンタリーだけど、上質なラブストーリーじゃねぇの?という出来。

ピエールとイヴの関係がステキすぎる。

共通の知人の紹介で知り合った二人だけど、

その前にディオールの葬儀で同席していた、というあたりが運命っぽい。

 

話の作り方もうまかったなぁ。

イヴの引退メッセージから、葬儀の時のピエールの弔辞につなぎ、

二人が暮らした家から美術品をオークションに出す流れに乗りながら、

イヴやブランドの回想に入る。

部屋にあふれる美術品は、二人で少しずつ買いそろえたお気に入りのものたちだ。

それを手放すことがつらくないはずがない。

 

ただ人間は、形あるものを末永く取っておく人と、

そうでない人に分かれる。

 

ピエールは後者だった。

彼は身の周りにイヴとの思い出がつまった品々を置く方がつらい人間なのだ。

作中、こんなセリフがある。

(うろ覚えだけど大意はあってるはず)

 

「もし私が先に死んだとしたら、イヴは私と同じようにしただろうか。

(=美術品を放出すること)

それはない。彼は身の周りが物であふれていないと死んでしまう人間だからね」

 

この辺からピエールとイヴの違いが感じられるけど、

それでもずっとお互いを想いあえるということは

なんか勇気をもらえる。

 

作品冒頭、イヴのスピーチの中で

「人生で最も大切な出会いは自分自身と出会うこと」

と述べている。

けれど本当に大切な出会いは

イヴとピエールが出会ったことなんじゃないだろうか。

よき友であり、同僚でもあり、そして恋人である、

そんな関係、滅多に築けない。

私は二人が出会ってくれたことに感謝したい。

 

 

VIVO(1)、あやかし古書庫と少女の魅宝 (1)

■VIVO(1)

1年間高校3年生のクラスを受け持つことになった

自分至上主義男とそのクラスメイトたちの話。

 

「ごくせん」とは対極のポジション。

生徒はまっとうで、先生はいい加減。

ホントにこんな教師がいたら

いろいろ叩かれそうだけど、個人的にはこれくらいいい加減でも

いーじゃないか、と思う。

学校にどれだけ負担を負わせる世の中なんだか。 

ずっと日本の教育枠の中で育ってきた人間が言うのもアレだけど、

終わってみて振り返れば、

ホント息苦しい日々だった。

悪い思い出ばかりじゃないけど、

若干ヒッキーな性格上、無意識のうちに息はひそめていたと思う。

そんな体験をしているから、

今、この漫画で私は生徒たちに自分ができなかったことを期待しているのかもしれない。

 

 

■あやかし古書庫と少女の魅宝(1)

何がすごいって、

完璧に水木しげるタッチを模倣した上に

能力バトルの要素を持ち込んで違和感なく仕上げてきたところにまず感動。

このクオリティはすごい。

一体どんな人なのだろうとググっていたところ、

いろんな漫画やアニメを水木絵で表現していた方のようで、

某書評はこれを「翻訳」と評しておりました。 

言い得て妙だと思います。

作風を取り入れつつも本家をネタにするのではなく、

水木しげる風」という表現手段を使って

新しい表現を模索してるところに純粋な愛を感じました。

この書評も秀逸で、あらすじも見どころもうまい具合にまとまってます。

楽しかった―、いい本だよーという気持ちがつまってます。

だから私はそれにまかせて、紹介のみ、ということで!

(いかんなぁ・・・^^;)

 

 

点と線

松本清張

光文社

 

いつか読まなきゃ~、と思ってた松本清張の代表作。

有名どころすぎて手が出なかったけど、

このたびカッパノベルス版を手に入れたので、

ようやく読み終えることができた。

 

新潮の文庫版が今、手を離れているので確かめることができないのだけど、

カッパ版には地図とか

イントロの抜き書きがあったり、

裏表紙には作者のコメントがあったりと、

なんか至れり尽くせり状態のような気がして

それだけでホクホクしてしまった。

(まぁ文庫版にはカッパにない解説などがあったりするので、

それはそれで魅力的ではある)

文字組みもちょうど良くて読みやすかったのもポイントが高い。

 

と、内容に関係のないことばかり連ねてしまったな。。。

内容的には「超昭和」。

平成生まれが読んでもピンとこないのではないだろうか。

(ホント聞いてみたい)

昭和の香りを嗅ぐ本、というテーマがあれば

この1冊を入れてもいいかもしれない。

列車のトリックでアッと言わせる十津川警部や亀さんが

だいぶ浸透してしまったので、

本書は今読んでしまえば「あぁ、うん、そうだね」と言わざるを得ない。

むしろ、これがブームになったことを鑑みて、

当時の世情を想像するのが

イマドキの読み解き方なのかなぁ、と思ったりした。

 

読んだやつはこのカバーじゃないんだけど、

ひとまずこれでペタリ。

 

 

 

夏の名残りの薔薇

恩田陸

文春文庫

 

「ねぇ、『バラ』って漢字で書ける?」

っていうようなCMありませんでしたっけ?

うろ覚えです。

 

それはされおき。

雪山の中にそびえるクラシックなホテルを舞台に

少しずつストーリーを変えながら展開される物語。

 

 

最初に主題パートがあって、

それから少しずつ変化して物語が展開する「変奏」パートがやってくる、

その作りは面白かったけど、

「次はどうなる?!」という期待を個人的には高められなかった。。。

(どういう変化をするのかは楽しみだったけど)

やっぱり私は素直に事件が起きて、謎を解き明かす系の方が好きだなぁ、と

改めて思った次第。

あと血縁が絡むと、誰が誰の息子で、おばで、親父で・・・とややこしくなる。

どうしても登場人物が多くなりがちなクローズド・サークルの環境の中、

人数を抑えた方ではあるかもしれないけど、

こういうときわかりやすいキャラがあるといいんだねぇ。

(最近読んだ「インシテミル」と心の中でそっと比較)

 

巻末にあるインタビューで、

物語を閉じる・閉じない、の話は興味深かった。

「あえて閉じない世界」というのもあるのか、と学ぶ。

 

 

よみがえりのレシピ

見たもの読んだものを

ちゃちゃっと書いていこうと決めたのに、

あっさり貯まっていく・・・。

それだけインプットが多いということにしておこうか・・・。

 

「よみがえりのレシピ」は

山形の在来野菜を育てる農家と

それを調理するフレンチのお店を軸に展開されるドキュメンタリー。

 

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タイトルから想像する内容とは正直違ったけど、

日本の美しい自然の中でとり行われる農作業の厳しさ、

そして大切に育てられた作物を活かした料理は

食べ物を粗末にしない、というシンプルな教えを呼び覚ましてくれる。

それと同時に、

昔ながらの野菜というのは

遺伝子組み換えのような下手な小細工がされていない、

つまり「安全な食べ物」なのだ。

確かに病虫害に弱く、

見た目も不揃いで、

育てるのは容易ではないのだけれど、

安心して食べられる、ということはなんて価値の高いことだろうか。

作物を享受してばかりの立場から好き勝手言うのも申し訳ないけど、

やはりそういう作物が食べたいよ。

どうしたら作る側も、買う側もハッピーになれる体制が作れるのだろうか、

なんてことを考えてしまう。

 

こないだアップした「モンサント~」とペアで見るのがおすすめ。

 

というワケで食に関するドキュメンタリーブームが来たので、

「フードインク」を借りてきた。

見終えたらまた感想書きます。

 

UFO大通り

著:島田荘司

講談社

 

久しぶりに島田荘司を読んだんだけど、

やっぱこの人、おもしろい。

「異邦の騎士」でいたく感動したことがあったんだけど、

それと似た感動をもらった。

追い詰められた時の状況描写が生々しくて、

読んでいるこちらもドキドキする。

すっごい上から目線を承知で言うと

「あ、島田荘司って上手だわ」

と改めて思い出させてくれた。

中身は 

 

・UFO大通り

・傘を折る女

 

の二本立て。後者の方が私は好き。

その「傘を折る女」の書きだしが

「あれは御手洗が私と横浜ですごした最後の春だから、1993年の5月のことだったと思う。」

なんだけど、御手洗と石岡君ってどうなったんだっけ?

なんか別れ別れになってるのかしら?

御手洗シリーズはおおむね読んだつもりだけど、

そこまで熱狂的ではなかったので、

ちと気になった。

 

 

こちら、装丁は岡孝治さん。

半透明のカバーを外すと、

エンボスでタイトルと著者名が入っているところに感動。